中等・大學・職業野球通信第13号
−無念!巨漢スタルヒン、2年連続決勝で甲子園を逸す−
学生服姿のスタルヒン
北海道・旭川中学の露人投手スタルヒンに甲子園出場の期待が高まっていたが、残念ながら昨日、道予選決勝で敗れた。
スタルヒン君はボルシェビキ革命で日本に亡命してきた白系露人の子弟で、日本定住後野球を始めたのだが、なにせ身長6尺2寸(187cm)、長身から投げ下ろす速球は超中学級である。
甲子園大会創始以来代表を南北海道に独占されてきた北北海道市民、特に旭川市民にとって、スタルヒン君こそは南北海道の牙城を壊しうる希望の星であった。
昨8年も道大会決勝に進んだものの味方の失策(9個)により甲子園の常連北海中に敗れたスタルヒン君にとって、連続で進んだ今回の決勝は辱(はじ)を雪(すす)ぐ絶好の機会であった。
だが、何という不運であろうか、対手札幌商に2安打しか許さなかったにもかかわらず、またも味方のエラーがらみで3点を失い、最後は3−4でサヨナラ負けを喫し、大魚を逸したのである。
長身を折りたたむようにして泣き崩れるスタルヒン君の姿は観衆の涙を誘わずにはいなかった。
だが、君はまだ4年生。来年を残している。最上級生の来年こそ、徹底した精進によって北海道中の中学を打ち破り、甲子園にその雄姿を現して欲しいものである。
昭和9年8月1日