中等・大學・職業野球通信第15号
−元気男吉原正喜、甲子園に再び登場!−
熊本工の元気男吉原
熊本工業の元気男、吉原がまた甲子園に戻ってくる。
先日行われた全国中等学校選手権南九州大会決勝で、熊本工業が大分商業を3-1で破り、甲子園大会出場を決定した。
熊本工といえば、川上哲治−吉原正喜のバッテリーは九州球界に鳴り渡っているが、軟投の左投手川上が好投できるのは専ら捕手吉原のリードと激励によるものというのが巷の噂である。
勝って泣き、負けて泣き、「直情径行」を地で行く吉原は、前回昭和9年の甲子園でも既に名物男であった。今回も、決勝で大分を破るや、ベンチの柱にしがみついておいおいと泣き出し、ナインは吉原を引き剥がして帰るのに一苦労だったという。試合中に敵をやじり倒す蛮声もまた有名である。
しかし、この吉原という男、ただ元気がいいだけではない。軟投の川上に対する曲直球・緩急を組み合わせたリードは中等離れしている。ファウルフライの追い方も恐ろしく俊敏、並の捕手ならば到底取れないようなフェンス間際のフライも難なく捕球、時にはスタンドにまでミットを伸ばしてもぎ取ることもしばしば。足も速く、一塁ベースカバーでは打者走者を追い越してしまうことも珍しくない。さらに、すばらしい強肩で、二塁送球はほとんど座ったままのように見えるし、実際に座ったまま一塁に牽制して走者を刺すことすらある。
まさに超中等級の捕手なのである。
各大学、職業野球各球団注目の元気男、吉原正喜の甲子園での活躍に注目しようではないか!
昭和12年8月9日