中等・大學・職業野球通信第2号
−実に延長25回!中京対明石−
肩を落として引き上げる明石・中田
全国中等野球優勝選手権大会は昨日準決勝中京商業対明石中学を行い、実に延長25回、1対0をもって中京が勝利し、前人未到の大会3連覇に向けて大きく前進した。
この試合、中京は重鎮吉田、明石は意表を衝いて左腕の中田が先発、緊迫した投手戦が続き遂に延長戦に突入した。
延長に入ってからは両軍ともにたびたび得点の好機を迎えたが、両投手の力投と野手の好守で得点を許さず、スコアボールドには次々と0が記されてゆく。
とうとう準備のボールドがなくなり、臨時急増のスコアボールドが造られ、観客がそれを観戦のついでに支える始末。
大会本部が無得点ならば打ち切り再試合を決定した25回、満塁から大目木のセカンドゴロを二塁手が本塁に高投、ここに1A対0をもって中京の勝利が決定した。
準々決勝で外野手の送球を瞼の上に受けて負傷しながら力投して勝利をもぎとった中京・吉田に対し、「世紀の剛球投手」と謳われた明石・楠本は遂に優勝の美酒を味わうことなく甲子園を去ったのである。
吉田君の決勝での力投を期待するとともに、中田・楠本両君の新たなる舞台での活躍を期待してやまない。
昭和8年8月20日