中等・大學・職業野球通信第6号
−怪腕嶋、準決勝・決勝で無安打無得点、5試合完封−
優勝を決め万歳する海草ナイン
こんな快挙がもう二度とあるだろうか。
去る8月20日に行われた全国中等学校野球選手権大会決勝海草中学対下関商業において、海草・嶋清一投手が準決勝から2試合連続無安打無得点の記録を成し遂げた。しかも決勝までの5試合全てが完封である。
嶋君は身長5尺7寸(171cm)と、投手としては普通の体格ながら、短距離100m走11秒フラット、走り高跳び1m65cmとすばらしいバネをもち、重い剛球とストンと落ちるドロップが武器。「海草の嶋か、嶋の海草か」といわれるほど。
しかし、大会に出てくるたびに優勝候補と期待されながら、ここ一番に弱く、栄光からは遠かった。
昨年夏の準決勝対中京商戦では味方に先制点をもらいながらその裏に四球で崩れて逆転負け、激怒した杉浦清コーチ(中京出身)に「もうお前たちのコーチはしない」と言われて泣いてすがって頼み込んだという。
本年から主将となった嶋は精進のしすぎで指に血豆を作り春は1回戦負けしたものの、遂に夏の快挙につながったのである。
甲子園は永遠に続くだろう、しかし、このような大記録は再び生まれないであろう。
昭和14年8月20日