六銖半両

 製造地‐中国 製作年代‐前漢呂后6年(BC182) 製作者‐呂后 材質‐銅 価格‐3,000〜1,000円(日本貨幣カタログ1996年版による。特記のない場合以下同じ)  

 呂后は漢高祖(劉邦)の糟糠の妻で、高祖亡き後は政治の実権を握った人。その後前漢王朝が存続していく基礎を作った名君だと筆者は思っているのだが、この人の場合「あの」エピソードがあまりに強烈過ぎて、ほかのことが頭に浮かばない。そのエピソードとは…。

 劉邦といえば酒好き・女好きで有名だが、その劉邦が晩年愛したのが戚夫人という人。劉邦の女遊びは昔からだから、まだ無名時代から連れ添っていた呂后も愛人の一人や二人は慣れっこだったはずだが、この戚夫人に対してだけは違ったらしい。

 高祖が亡くなるやいなや、呂后はこの戚夫人を逮捕する。そして…。眼をえぐる。舌を切り取る。喉を薬で焼いて声が出なくする。両手足を切断する。史書には記述がないが、この猟奇的な処置からして性器にも何らかの虐待を加えたに違いない。

 当時の中国は2階が住居で、1階が便所になっており、豚が飼われていたのだが、呂后は変わり果てた戚夫人を便所に置き、「人テイ(豚の意の漢字を当てるがフォントにない)」と呼んで蔑んだという。その姿を見た息子(後の文帝)は「こんなことは人のすることではありません!」とショックを受け、以後酒色にふけるようになったという。

 まあすさまじきは嫉妬と権力だが、こんな大手術をして戚夫人を死なせなかった当時の中国の医師の技術に感心するとともに、命令とはいえこんな手術をしてしまう医師の倫理観にあきれはててしまう。

 似た話は映画『西大后』にも登場するので、過去4千年何回もあった話なのかもしれない。いやはや。

 

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